子どもの本だより 著者インタビュー

子どもの本だより 著者インタビュー

2018年01月31日

田中友佳子さんの巻

著者と話そう ()(なか)友佳子(ゆ か こ) さんのまき

 昨年11月に刊行された絵本『たぬきがのったら へんしんでんしゃ』の作者・田中友佳子さんにお話を伺いました。

Q 『たぬきがのったら へんしんでんしゃ』は、出産されてから初めての絵本ですね。絵本を制作する上で、何か変化はありましたか。

A 以前は、絵本を読み聞かせたときの子どもの反応を、頭の中で想像して制作していました。三歳児の発達段階に関する本など、本で読んださまざまな情報も参考にしていました。でも、子どもが生まれてからは、実際にどんな反応をするのかわかるようになりました。子どもは、絵を細かいところまで見ています。たとえば、『たぬきがのったら へんしんでんしゃ』では、背景に青い鳥や空に飛ばされたたぬきの帽子を描いていますが、子どもは、そういう細かいところにちゃんと気づくし、細部が本当に好きなんだと実感できるようになりました。

Q この絵本を制作したきっかけは何ですか。

A 上の子が三歳くらいのときに、「電車がワニに変身する絵本をつくって」と言われたことです。そのとき、パッと浮かんだのが、まじめな表情の四角い電車でした。最初のラフの段階では、電車がさまざまな生き物などに変身するお話でした。それから、変身する理由が何かある方が、物語が面白くなると思ったので、「いわおとこ」や「おばけタコ」、「だいだらぼっち」などの妖怪を登場させることにしました。実際に描き始めると、四角く硬い電車の形を生かして、生き物に変身させるのは難しかったので、乗り物に限定して変身することにしました。

Q 一番苦労したのはどの場面ですか。

A 宇宙人が登場する場面です。宇宙人の形が決まるまでに、一年以上かかりました。誰も見たことがない新しい宇宙人を求めて、上の子にも宇宙人の絵を描いてみてもらって、一部参考にしています。他の場面と色がかぶらないように、はっきりとした色を数色選んで描きました。ページを開いたときに楽しく、かつ、読んだ人にびっくりしてほしかったのです。

Q 田中さんの絵本には、魅力的なおばけがたくさん出てきますね。田中さんにとって、おばけはどんな存在ですか。

A 小さい頃、自然に囲まれたところで暮らしていて、暗闇や裏山で時々何かの気配を感じ、怖いと思っていました。大人になって、水木しげるさんの漫画を読んだとき、ふと、小さかった頃に怖いと感じた気配は、このおばけたちだったのかなぁと思いました。いるはずはないけれど、いるかもしれないという身近な存在です。それからおばけについての文献なども読むようになりました。

Q それで、デビュー作『こんたのおつかい』にもおばけが登場するんですね。

A 『こんたのおつかい』では、おにを描くために、おにについて色々と調べていました。絵本に登場させる妖怪は、姿形は怖いけれど、ちょっとユーモアがあって、面白い妖怪にしたいと思いました。また、『こんたのおつかい』を制作する前、編集者さんへの売りこみ用に『へこきおに』という絵本も作りました。でっかいおにが、へをこいたら村が臭くなってしまい、困った村人が、おにのへを止めようと奮闘するお話です。

Q 結末が、気になりますね。

A たしか、への匂いを花の香りにして、村の悩みを解決したと思います。当時、絵本を見せた編集者に、その結末は解決なのか? と言われました。

Q 現在、お子さんは七歳と四歳とのことですが、子育てで大切にされていることはありますか。

A 土に触れたり、木々の匂いをかいだり、自然の中で五感を使って感性を磨くことは、子どもにとって、大切なことだと思っています。将来、何をするにしても、感性の豊かな子に育ってほしいので、自然の中で子どもを育てたいと思っています。ですが、今住んでいるところは、それほど自然に恵まれておらず、親が連れていかないと、子どもは自然に触れる機会がないので、子どもをなるべく自然の中に連れていかなきゃという使命感があります。

Q ご家族でよくキャンプに行かれるとか。

A ええ、春から秋までの間、キャンプによく行きます。川に行って、上の子が素手で獲った魚を夫が(さば)いたりします。といっても、キャンプに行くようになったのは一昨年からなので、エキスパートではありません。流星群など、星空のショーも見せたいのですが、子どもたちは眠ってしまいます。

Q お子さんの好きな遊びは?

A ふたりとも、幼稚園に上がるまでは「プレーパーク」というちょっと変わった公園で、朝から晩まで土を掘ったり、そこに水を流したり、焚き火でおいもやマシュマロを焼いて遊んでいました。帰りは、自転車の後ろで遊びつかれて寝てしまいます。家に着いたら、全身泥だらけで眠っている息子を、お風呂場に運んで、シャワーをかけて洗って起こして、ご飯を食べさせていました。上の子には三歳くらいのときに、「雨でも遊ぶ」、「暗くても遊ぶ」、「眠くても遊ぶ」という三か条を宣言されたこともあります。

Q 毎日が楽しそうですね。

A 子どもたちが言った面白かった言葉を、記録しています。子どもの柔軟な頭の中を見せてもらっているようで、刺激になります。

 子どもたちには、趣味でもいいので、何か打ちこめるものを見つけて、充実した人生を送ってほしいです。

Q 今後の抱負をひと言お願いします。

A 面白くて、思わず笑ってしまうような絵本をこれからもつくっていきたいです。

 ありがとうございました!

 

田中友佳子(たなか ゆかこ) 東京生まれ。幼少期を自然に恵まれた神奈川県津久井郡で過ごす。武蔵野美術大学卒業。趣味は、家族でのキャンプ。二〇〇四年に、絵本『こんたのおつかい』でデビューし、人気を博す。その他の作品に『かっぱのかっぺいとおおきなきゅうり』、『にげだしたてじなのたね』、『こんた、バスでおつかい』(いずれも徳間書店)がある。