徳間文庫

雨と詩人と落花と

葉室麟/著


発売日:2020年01月11日
ISBN:978-4-19-894529-9
判型/仕様:文庫判
定価:本体680円+税

 内容紹介

愛を見つめ、慈しむ心を描き続けた巨星・葉室麟。
その深き到達点!
九州豊後日田の詩人広瀬旭荘を描いた
著者畢生の感動作!
書名は、以下の広瀬旭荘の漢詩・七言絶句
「春雨到筆庵」の最終行からとっている。

  菘圃葱畦(しゅうほそうけい)
  路(みち)を取ること斜(ななめ)に
  桃花多き処(ところ)是(こ)れ君が家
  晩来何者ぞ門を敲(たた)き至るは
  雨と詩人と落花なり

菘(とうな)の圃(はたけ)、
葱(ねぎ)の畦(うね)の中、
桃の花がいっぱいに咲いているあたりに
君の家がある。
夕暮れ時に門を敲(たた)いて訪ねてくるのは
誰だろう。
雨か詩人か散る花か。

兄の淡窓にともなわれ、初めて松子の実家を
訪ねた時の出会いを詠んだ漢詩だった。

時は大塩平八郎の決起など、
各地が騒然としている幕末の激動期。
儒者として漢詩人として、そして夫として
どう生きるべきか。
動乱の時代に生きた詩人の魂と
格調高い夫婦愛を描く。

儒者・広瀬旭荘は九州・日田の広瀬家に生まれた。広瀬家は天領の日田金をあつかい、
大名貸しまで行う富商であった。
二十五歳年長の兄が広瀬淡窓。
儒学者であり詩人として名を馳せており、
私塾の咸宜園を開設した。
兄の淡窓は世に知られた学者であり、
詩人であったが、代官所の横暴に耐えていた。
しかし、旭荘は怒りを募らせた。

そのころ、旭荘は二度目の妻・松子を迎えた。
時折、怒りを抑えきれず打擲する旭荘に、
前妻は去っていた。

しかし、松子は心優しき詩人である旭荘の本質を
理解していた。
堺に遊学した旭荘は、大塩平八郎決起の時期に、
江戸へ。
詩人として儒学者として、どう生きるべきかを
問われる。

詩人の魂と感動的な夫婦愛。


幕末、動乱の時期に生きた詩人と、
彼を支え続けた妻。至高の夫婦愛とは?
文中の漢詩が深い感動を呼ぶ巨星の到達点!


巨星・葉室麟が逝去後、刊行された二冊目の著書となった。

 著者プロフィール

葉室麟
1951年北九州市小倉生まれ。西南学院大学卒業。地方紙記者を経て、2005年、『乾山晩愁』で第29回歴史文学賞受賞。07年『銀漢の賦』で第14回松本清張賞受賞。2011年、『蜩』で第146回直木賞受賞。2016年『鬼神の如く黒田叛臣伝』で、第20回司馬遼太郎賞を受賞。他の著書に『千鳥舞う』『天の光』『天翔ける』『大獄 西郷青嵐賦』『嵯峨野花譜』『玄鳥さりて』『雨と詩人と落花と』『影ぞ恋しき』『蝶のゆくへ』『青嵐の坂』など多数。2017年12月23日逝去。

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