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2021.09.29
電子書籍あり
秋萩の散る
阿倍女帝こと孝謙天皇に寵愛され、太政大臣禅師や法王などの高職に就いていた頃の面影は、もはやない。女帝の死後すぐに下野国薬師寺別当に任ぜられた道鏡は、空ばかり見て過ごしていた。そこに行信と名乗る老僧が、道鏡に近づき「憎い相手はおらぬか――」と囁く。そう問いかけられたとき、道鏡の心に浮かんだ顔は……。『若冲』『落花』等で注目の歴史小説家が、奈良時代、治世の安寧を願った人々の生き様を描いた珠玉の短篇集。
ちゃとら
久しぶりの澤田瞳子さん。奈良時代の家柄、出世、妬み嫉み、呪詛ドロドロ満載、5話の短編集。中でも「夏芒の庭」は親達の因果で大学寮で起こる悲劇が切なかった。「秋萩の散る」は孝謙天皇亡き後の道鏡の話。「誰を呪いたいのか」苦しむ道鏡は、とても純粋に描かれていた。ギュッと詰まった面白い本だった。
yuzi
昨年直木賞を受賞した澤田瞳子による『孤鷹の天』のスピンオフ短編集らしい。知らずに先に読了。気に入りの登場人物が本編では死んでるとはショック。『~仏師・定朝』も読みましたが、作者は古代仏教を研究してきた方だとか。時代背景がしっかりしてるはずだぁ。時代小説は骨組みがしっかりしてこそ物語が活きる。表題作面白い解釈。奈良時代の有名どころが脇役として多々登場。どの話も面白かったが、個人的には『南海の桃李』『夏芒の庭』が好き。泣いた。いや、『梅一枝』も面白かった。笑った。『凱風の島』の先が暗い感じも奈良時代ならでは。