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夏の探偵は学生しかしない
野島芳生は、東央大学渋谷キャンパスを歩いていた。研究室に向かう最中、ある人だかりが道を阻む。何事かと事情を聞いてみると女子トイレが盗撮されたらしい。そんな人混みの中から声が聞こえた。容疑者は猿顔を真っ赤にしながら無実を叫んでいた。どうやら、その猿顔の男子学生・富岡は見学に行く予定だった今井研究室の人らしい。研究室のボス由里子は富岡の無実を半分だけ信じ、仕方なく無実の証明をするために立ち上がった!
練りようかん
社会心理学科研究室の面々が犯罪心理で紐解く事件の顛末はどれも結構ブラックだった。主人公が思考の道筋を正される准教授との会話は、些細な言動から人間の狡さと欲を見抜く過程をトレースできてわかりやすかった。作中の「模倣者が敵う悪意ではない」という言葉が通奏低音となり、リスクの常態化や肥大化に気付かぬ第二のリスクに焦点を当てた点が興味深かった。特に面白かったのは「藪をつついて変質者を呼ぶ」だ。そもそもの露出狂心理から二転三転する予測心理に納得、他人を下げて自分を上げようとする類友に天誅が下った結末にスカッとした。
barcarola
探偵役の由里子に魅力が感じられない。むしろ腹立たしかったり。その推理にしても雑というかなんというか……。