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こんな大人になるなんて
お嫁さんになったら自然と家事ができるようになるんじゃないの? 思っていたのとぜんぜん違うんだけど――(「だれかの奥さん」)。借金して、地元に帰って、初体験の相手と不倫する。この先、どうやって生きていったらいいのか途方に暮れる――(「ずくもない」)。あのころ思い描いていた未来に立ってない、ぜんぜん立ってない! いつのまにか遠くまできてしまった、私たちのための作品集です。
逢日
吉川トリコさんの軽妙なタッチの短編集。冒頭のベティの話と末尾の誰かの奥さんが良かった。ベティに結晶される少女から女性への過渡期の危うさ。その瑞々しさ、さらりと触れられるベティのその後の凡庸さが何とも文学的。誰かの奥さん…は社宅の大冒険。壮大な心の成長が短編ならではのスピード感で描かれる。差し込まれるベランダのシーン。緩急の見事さに舌を巻く思いがする。良き読書時間だった。
りえぞう
◎。いつもながら、読ませるなあと感心するが、なんだか内容が重いというか、身につまされるようなのが多くて、あまり厚い本ではないのに、ちょっと堪えた。