電子書籍あり
荒野に獣 慟哭す 5
獣神の章
ニュータイプの獣化兵である御門周平は、東亜大学の研究者であった竹島丈二としての記憶を取り戻したものの、その瞬間の心の隙に、マヤの末裔ラカンドン族のツァ・コルに、意識を乗っ取られてしまった……。友のために、恋人のために、御門=竹島は、それでも疾駆する! ユカタン半島に谺する雄叫び。夢枕獏のスーパー伝奇アクション、遂に堂々完結へ!
急性人間病
感覚が象徴に成り代わった瞬間、小説も終わらざるを得ない。呼び止めて、詳しい説明や絵解きを求めても、それは詮無きことだ。われわれにできることは、去ってゆく異形に「待っているよ」と呼びかける事だけである。
西村章
1990年にジョイノベルス版第一巻を即買いして以来ずっと続きを読んでいなかったので、今回改めて通読。獏さんの作品である以上、数々の傑作スーパー伝奇作品群とどうしても比べてしまうのだけど、登場人物は類型的だし、伝奇性やストーリー展開もやや安易な感があって、いつものスピード感と無窮迷路感に欠けるなあ、という印象。でも、最終章〈如来咆哮〉のラストシーンがもたらす映像喚起力は印象深いし、エピローグの余韻もよいので、読んで損した気分にはならなかったかな。とはいえ、獏さんの最良の作品のひとつ、というわけではないかもね