文芸書

龍の袖

藤原緋沙子/著


発売日:2019年07月10日
ISBN:978-4-19-864882-4
判型/仕様:四六判
定価:本体1,700円+税

 内容紹介

三十年、この形見を手放せなかった。


坂本龍馬を生涯想い続けた女、
千葉佐那の人生。

北辰一刀流の千葉家で生まれ育った佐那は、
坂本龍馬と十六歳の時千葉道場で出会う。
しかし、惹かれ合う二人を時代の波が引き裂いた。

そして三十九年後――。

千葉灸治院で働く佐那のところへ
板垣退助の紹介という男が現れる。
「坂本龍馬先生と佐那さんは縁があると
お聞きしたので」
すると、佐那は文箱から袷の袖を取り出して――。

大政奉還後の日本の道筋を作った男、坂本龍馬。
その許婚として龍馬を待ち続けた女、千葉佐那。

運命に翻弄された二人の、
知られざる愛の物語。


===

「佐那殿、品川の海じゃ、綺麗じゃのう」
龍馬は品川の海を眺めながら両手を広げ、
大きく深呼吸をした。
「ほんとに……」
佐那も眼下の波打ち際から遠くの地平線まで
眺めて感歎の声を上げた。
佐那だって海を知らない訳じゃない。
何度も江戸湾の海は見てきている。
だが今日目の前に広がる海は、
太陽の光を受けてきらきらと輝いていて、
それがどこまでも続く光景は、前途は幸せに
満ちている、希望は無限に広がっていると、
佐那に囁いてくれているように思えた。
(本文より)

 著者プロフィール

藤原緋沙子
高知県生まれ。立命館大学文学部史学科卒業。小松左京主宰「創翔塾」出身。『隅田川御用帳』シリーズで第二回歴史時代作家クラブ賞シリーズ賞を受賞。著書に『番神の梅』『茶筅の旗』主なシリーズに『橋廻り同心・平七郎控』『藍染袴お匙帖』『見届け人秋月伊織事件帖』『浄瑠璃長屋春秋記』『渡り用人片桐弦一郎控』『秘め事 おたつ』などがある。

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