いのち買うてくれ
宝暦十一年(一七六一)、遠山弥吉郎に主君を誑かす不届き者・丸屋を闇討ちせよとの密命が下る。正義のため、そして家禄の引き上げのために引き受けた弥吉郎だったが……。謀略に巻き込まれ妻子とともに江戸へ逃げることになった弥吉郎は並ならぬ貧苦に揉まれることにより、武士とは何か、命とは何であるかを見つめなおしてゆく。魂震える時代小説超大作。書下し。
ゆりあす62
図書館本。★★★☆☆ 真面目すぎて権力者に利用され、家族と江戸へ逃げて働き口を探す。そこでの奮闘が涙ぐましく、やっぱり江戸は都会だから紛れ込めるけど、身元保証の無いものには、生きていくには酷な町。特にお金の問題は身に染みる。そして万策尽き果てて自分自身を売りに出す。家族が仲が良いのが希望。いつも思うのは「お侍様はつぶしがきかないからね~。」
ソババッケ
藩上層部の私欲の手先に使われ国許を追われて江戸で雌伏する。「うつけ者の値打ち 風の市兵衛」に酷似している。家族を連れ江戸へ出るが、人の情けに救われて、日雇いから、左官の見習い、大道芸人へと境遇は向上していく。しかし、怪我をしたことで借金が圧し掛かり、どうにもならなくなった主人公は、家族を思い己の命を売りに出す。それを高値で買う札差の男。ここまでは「葉隠」に通じるものがあって面白い。妻や息子との家族の絆もうまく描けている。しかし、幼馴染の推挙で許され国許へという結末は、後味の悪さのみが残る・・・。★3.3