ある朝自分が狂人であることに気づいた梶原章吾教授は、自分が狂人であることを知る唯一の人間・飯塚を殺害し、北へ向かった。教授の目的地は、かつて傷を負った日露戦争の戦場の霧の原野だった。満蒙の枯野をさすらう教授は、やがて黒十字療養所にたどり着く。療養所には、美少女人形のような看護婦や肺を患う日欧ハーフ青年、双子の妹を守るために母親と医師を殺害した東欧の青年が暮らしていた。彼らはいずれも自らを異形や妖怪だと思い込んでいた。
そんな彼らが集う、黒十字サナトリウム。復活祭の日、何かが起こる…。第9回に本SF新人賞を受賞した、流麗かつ壮大な幻想譚。