材木商・伊勢杉陣左衛門は向島の料亭・吉野の新築普請に用いる杉材木千本を一万両で請け負う。ところが江戸まで運ぶ途中、下田沖で時化に遭って七百本の杉が残らず流された。残りの三百本は熱田湊に留め置かれ、山元も回漕問屋も、金を先払いしない限りは一本も回さないという。窮地に立たされた伊勢杉に、晋平が助け舟を出した。箱崎町の貸し元、あやめの恒吉に四千両を用立ててほしいと願い出る。首尾よく熊野杉が納められれば、吉野から材木代残金八千両が手に入る。それを全額、恒吉に支払うという提案である。首尾よく運べば四千両の儲け。逆目が出たら四千両の損。博打にも似た大勝負に乗った恒吉は、果たして、無事、江戸に杉を運びいれることができるのか。命を賭けた男の矜持と侠気。目指すは江戸。嵐に襲われ大波に翻弄されながらの凄絶な杉回漕を描く長篇時代小説。